2024年11月18日のNHK「あさイチ」で相続特集 相続のトラブルを防ぐ方法、相続放棄の手続きについて放送された内容をファイナンシャルプランナー資格を持つ筆者が分かりやすく解説しました
- NHK「あさイチ」知らないと怖い相続トラブル特集
- 相続放棄でプラスもマイナスも遺産相続をすべて拒否する
- 相続トラブルを対策する知恵を特集
- 早速、相続放棄の手続きを行う
- 相続放棄とは、どういう意味?
- 相続放棄できないケースがあるので注意!
- 相続放棄のルールをちゃんと知らないと余計なお金を払ってしまう場合がある
- 相続放棄したのに届いた請求書を支払う必要はある?
- 限定承認とは?
- 売れなそうな家や土地はどうすればいいの?
- 受け取れる相続財産があったのに、家族間でトラブルになってしまった事例
- 遺産を分ける時の法律上のルールとは 遺留分
- 遺産として不動産を分ける方法
- 親の介護に対する寄与分は認められる?
- 昨今、相続の相談が法律事務所へ増えている
- 相続放棄の期間の延長の申請
- 相続トラブルを未然に防ぐための方法 家族会議
- 相談した後で遺言書に書くのが重要
- 遺言書のポイント
- まとめ 相続税などにも注意
NHK「あさイチ」知らないと怖い相続トラブル特集
2024年11月18日、NHK「あさイチ」知らないと怖い相続トラブル特集です。
借金や未払金など負の遺産の方が多くなっている
相続トラブルといえばお金持ちの家の取り合いの問題かと思っていましたが、最近はそうではありません。むしろ借金や未払金など負の遺産の方が多くなっています。
葬儀が終わったら請求書が届く 亡くなった夫が密かにカードローンで借金をしていたことが判明
ご主人の葬儀が終わって家に帰ったら「支払いをしてください」という銀行からの通知が届いて驚くことがあります。亡くなった夫が密かにカードローンで借金をしていたことが判明しました。これは怖いですね。
借金が多かった母親 絶縁関係にあっても親の借金は子どもが相続する必要はある?
昔から借金が多かった母親とは絶縁関係になっていますが、亡くなったら子供が借金を背負わなければいけないんでしょうか。心配です。
絶対売れない土地がたくさんある 持っているだけで管理費がかかる どうすればいい?
絶対売れない土地がたくさんあります。子供がいても管理費がかかるので相続させるのはかわいそうだと考えています。
相続放棄でプラスもマイナスも遺産相続をすべて拒否する
相続放棄という方法があります。相続放棄の件数は年々増えています。2016年には20万件程度でしたが、2023年度には28万件と過去最大になりました。
ちゃんと知っておかないと余計なお金を支払わなければいけないこともある
この相続放棄、ちゃんと知っておかないと大変なことになったり余計なお金を払うことがあります。役所の人なんかもよくわかってなかったりして平気で嘘を言ったりしますので注意してください。
負の遺産になりやす誰も住んでいない実家 管理不全空き家に指定されると固定資産税が6倍になってしまう
また負の遺産になりやすいのは誰も住んでいない実家です。何年も空き家になってしまっていると、そのまま放置すると管理不全空き家に指定されて固定資産税が6倍になってしまうことがあります。
相続トラブルを対策する知恵を特集
相続トラブルを対策する知恵を特集します。
お姉さんには多額の負債があった
思わぬトラブルが原因で相続に対応しなければならない羽目になることがあります。Aさんは最近、20年以上会っていなかったお姉さんをなくしました。数ヶ月後にお姉さんのお子さんから「放棄しました」という連絡です。お姉さんには多額の負債があったので、甥が相続放棄をしました。自分も相続放棄をしなければならないと思いました。負債の内容は、定期借地権の土地を借りていて、その借地料と、所有していた2階建ての建物の固定資産税も滞納してしまっていました。
相続放棄の手続きについて詳しく聞くために弁護士に相談した
その手続きについて詳しく聞くために弁護士に相談しました。
相続放棄で最初に必要なのは他に相続人がいないか、自分が本当に相続人かどうかの確認
そこで弁護士に言われたのは「お姉さんに他に子供がいないかを調べてください」と言われました。いなければご両親が亡くなっているので兄弟のあなたが相続人になりますということです。まず自分が本当に相続人かどうかを確認しなければいけません。
相続する順番のルール
相続には順番にルールがあります。なくなった人の配偶者は常に相続人となります。続いて1番目が子供、2番目が両親、3番目が兄弟となります。
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本を全て入手する必要がある
この事例の場合ではお姉さんのご主人と両親が亡くなっていることは分かっています。しかし、お姉さんに他に子供がいないかどうかを確認する必要があります。そのためには、亡くなってから出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本を全て手に入れなければいけません。
Aさんの事例では、戦前の生まれだったので、あちこち点々としていました。新宿、木更津、世田谷、北海道遠軽町、松前町、大変ですね。東京から北海道まで7つの自治体から取り寄せる必要がありました。そのためには、このいくつもの戸籍謄本を読み込んで本籍地をたどっていかなければなりませんでした。
たびたび弁護士に頼り、費用がかさんだ
これは知識が無いとなかなか難しい作業です。そのためたびたび弁護士に頼って、そのために費用がかさんでしまいました。なんと全部で6回も弁護士さんのところに行きました。そんなに苦労するとは全く思っていませんでした。
※相続人をたどっていく作業を一括で代行してくれる弁護士事務所や司法書士事務所もあります。
早速、相続放棄の手続きを行う
必要な情報も全て揃えて他に子供がいないため、この人が相続人であることが判明しました。そして早速相続放棄の手続きを行いました。相続放棄申述書に記入して収入印紙を貼り付けます。
相続放棄の期限がある
ただ、期限があります。期限が3ヶ月以内になっています。自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内です。
しかし裁判所へ書類を出したところ、書類の不備があって何度も再提出を求められてしまいました。更に弁護士に相談し、結果的に相続放棄はできましたが、弁護士費用などで10万円もかかってしまいました。手続きをするのも大変でしたのでヘトヘトになってしまいました。サラリーマンなどで平日働いていたAさんにとっては、弁護士事務所は平日しか行けませんので、休みを取ったり、弁護士さんとのアポイントを取ったりするといったことが大きな負担でした。
いくらか遺産がもらえるんだったら頑張りがいがありますが、「相続放棄するためにこれだけ苦労が必要というのもなんだかな」という感じですよね。
相続放棄とは、どういう意味?
相続放棄とはどういうことでしょうか。プラスとマイナス両方の遺産相続の権利と義務を放棄することです。
相続放棄はどういう時に有利?
マイナスの遺産がある場合には有効です。
相続放棄の手続きはどうすればいい?
書類を揃えて家庭裁判所に申請が必要です。これを3ヶ月以内に行う必要があります。自分が相続人だと分かった日から3ヶ月以内に申請する必要があります。これをしていないと自分が相続する気がなくても自動的に相続人になってしまいます。手続きが終了し、家庭裁判所に受理されればOKです。
相続放棄できないケースがあるので注意!
しかし、相続放棄できないケースがありますので注意してください。
遺産の一部でも使ってしまうと相続する意思があるということになってしまいます。
例えば、
- 亡くなった人のお金で葬儀費用を支払った場合、
- 車などの財産やその他の不動産などの名義変更を自分や他の人にした場合、売却したりした場合、
- 亡くなった人の料金の請求書が来ていたので支払ってしまった場合、
こういったことをしてしまうと亡くなった方の遺産に手をつけていることになってしまうので相続放棄できなくなってしまいます。
ありがちな相続放棄できないケースの例
「電話や水道光熱費などの請求書が来ているから、迷惑をかけると申し訳ない」と言って代わりに支払ってしまいそうですよね?
しかし、支払ってしまうと、債務を肩代わりしたので、相続する意思があるとみなされてしまいます。
これが相続放棄できなくなる落とし穴ですね。
例えば、ご家族、ご主人の携帯代を普段奥さんが払っていて、亡くなった後にそのまま払ってしまった、というような場合もありがちだと思いますが、借金などがあり、相続放棄が必要な可能性がある場合は注意してください。
相続放棄のルールをちゃんと知らないと余計なお金を払ってしまう場合がある
そして、この相続放棄のルールをちゃんと知らないと余計なお金を払うってしまう場合があります。
相続放棄の手続きをしたのにクレジットカード会社から請求書が届いた
Bさんはお父さんとお母さんが離婚していて、その段階から会っていません。もう負債があろうがプラスの財産があろうが関わりたくなかったので相続放棄にしました。そういう時もありますよね。
しかし、亡くなった父親が使っていたクレジットカード会社から請求書が来ていました。総続報していたのでが支払義務はありませんでした。
役所から父親が滞納していた住民税の支払い通知が来た
「あーもうこれで終わりかな」と思っていましたが、数ヶ月後になんと役所から父親が滞納していた住民税の支払い通知が来ました。おかしいなと思って区役所に電話したところ、区役所の税務担当者が「亡くなった住民税の支払い通知が届きました」と言ったところ、なんと役所の人が「相続放棄していても住民税は関係ありませんので払ってもらう必要があります」と言ってきました。
住民税の未払い分も相続しなくて良いことが判明
しかし、様々な財産も負債も全て相続放棄したのに、住民税だけ別なわけがありません。そこでちゃんと調べて、もう1回連絡しようと考えて、様々な法律や相続に関して調べました。そしてその時、相続放棄すれば住民税の未払い分も相続しなくて良いことを突き止めました。
再び区役所の担当者に電話した結果
区役所の担当者に再び電話したところ「相続していれば父親が滞納した住民税を支払わなくてもいいですよね」と言ったところ、区役所の担当者は折れることもなく「そうですね」と答えました。
これは怒りますよね。こういうことが本当にあるんです!実は筆者もありました!
間違えたことを全く認めておらず、詫びることもありませんでした。
そこで区役所に苦情のメールを送ったところ、後日区役所から「今後、職員教育を徹底します。申し訳ございませんでした」とメールがやってきました。普通は役所から送られてくるものが間違っているとは思いませんから、これを払ってしまっている人もいるんだろうなと思いました。
相続放棄したのに届いた請求書を支払う必要はある?
相続に関する法律や相続に関しても、ちゃんと知っていないと損をすることになります。
後で気づいても返してもらえるかどうか分かりませんよね。
弁護士の中里きさ子さんに聞いてみました。
結論は、相続放棄したのに届いた請求書、支払う必要はありません。
相続放棄したことを知らない場合に請求してくることはある
区役所が知らないことはあまりないと思いますが、例えばクレジットカード会社など、債権者によっては相続放棄したことを知らない場合がありますので、その場合には払ってくださいと言ってくることはあります。また、債権者の担当者が変わってしまって相続放棄されたことが社内で共有されていない場合があります。
相続放棄したことを証明する証明書を裁判所から取り寄せてコピーを債権者に送付すればOK
そういう場合には、自分は相続放棄しましたよということを裁判所から証明書を取り寄せて、そのコピーを取ってお知らせしましょう。そうすれば解決します。
中には相続放棄したことを知っていても請求書を送ってる悪徳債権者もいる
また、とにかく請求書が来ただけでびっくりしてしまうという人がいると思います。相続放棄しておけば安心だと思い込んでいると焦ってしまいます。中には相手が相続放棄をしていると知っていても、その焦りなどを利用して、慌てて支払ってくれるんじゃないかと期待して請求書を送りつけてくる債権者もいるそうです。
後で支払わなくてもよかったと気づいた場合に、返金してもらうことは可能?
この場合、後で取り返すこともできます。しかし、もちろん弁護士さんにお願いする、裁判所に訴える、といった手続きがどうしても必要になってしまいますので、金額によっては泣き寝入りしてしまう人もいるのではないでしょうか。
相続放棄に関しては例外はありません。
限定承認とは?
マイナスの遺産とプラスの遺産、両方あった時にはどうすればいい?
さて、負の遺産・マイナスの遺産とプラスの遺産、両方あった時にはどうすればいいんでしょうか。
持ち家の住宅ローンが残っていた場合
例えばご主人が亡くなって持ち家の住宅ローンが残っていました。1700万円ぐらい残っています。団信で書類のやり取りをして、あとは名義を残った奥さんに変えればいいのかなと思っていました。
団信とは?
団信とは住宅ローンに加入する団体信用生命保険です。契約者が亡くなると残りの返済が不要になるという保険です。
亡くなった夫がカードローンで多額の借金をしていたことが判明
その手続きのために銀行に訪れましたが、なんとその銀行でカードローンからご主人が300万円の借り入れをしていました。さらに他の銀行でも借り入れがあって借金が400万円以上あることが分かりました。自分が経営する会社の資金繰りや生活費に当てていたものと見られています。
こうなると他にも借金があるかもしれないと不安になってしまいました。
相続放棄してしまうと自宅もなくなってしまう
銀行から提案してくれたのは相続放棄です。相続放棄すれば借金はなくなりますが、夫が残した自宅もなくなってしまいますよね。相続放棄をしなければ自宅は残りますが、借金の返済義務が残ります。ご主人がせっかく買った家は残したいですよね。しかし、自分も専業主婦だったので収入は全くありません。ご主人が亡くなっても次から次へと問題が出てきました。泣いている暇もありませんでした。
3つ目の選択肢 限定承認はプラスの遺産と借金、どっちが多いのかわからない時に最適
こういうケースもかなり多いようです。これ、難しいですよね。亡くなった人が残したプラスの遺産と借金、どっちが多いのかわからないという場合があります。相続する単純承認と相続放棄、そして3つ目の選択肢として限定承認という方法があります。聞いたことがない人もいるのではないでしょうか。
限定承認とは?
限定承認とはどういうことかというと、例えば遺産として3000万円がありました。しかし、借金がどれぐらいあるか分かりません。しかしこの限定承認をしておくと、例えば遺産が3000万円で借金が最終的に1000万円あったという場合には、差額の2000万円を手元に残すことができます。
差額のマイナスの1000万円の部分は返済が不要
また、借金の額が残された財産より多かった場合、例えば4000万円あった場合には、返済義務は残された財産の3000万円までになるので、差額のマイナスの1000万円の部分は返済が不要となります。これは通常の相続と同じです。
限定承認を行うと、亡くなった人の借金が残された財産よりも多い場合、財産を超えた分に関しては返済する責任等がなくなるというものです。3000万円ももらえないですが、1000万円の残った借金も払わなくてもいいです。
自分の遺産額全部がわからない場合には、限定承認しておくと安心
不動産の場合でも同じです。遺産の額が3000万円で借金が1000万円だった場合、本当は家を売ってその1000万円を支払って差額の2000万円だけ残します。もし、家を売らないで残しておきたい場合には、この1000万円は自腹で払う必要があります。自分の遺産額全部がわからない場合には、限定承認しておくと安心です。自分が多くの負債を負わなくてもいい、という状況が確保できます。
例えば、家だけで3000万円だった時には、家を相続してしまうと自腹で借金を払わないといけませんが、それができない場合には最終的に相続をしないという選択をすることもできます。B産の場合は家の価値に比べれば夫の残した債務400万円だったら少なくて、なんとか自分で払うことができそうです。
まず限定承認をしておいて、そこから検討する
まず限定承認をしておいて、そこから色々検討するという方法もあります。
限定承認は手続きが面倒
意外とリスクはありませんが、手続きが面倒です。裁判所に相続放棄する手続きは、裁判所に提出用の用紙を出すだけでいいですが、限定承認をするとそういうわけにはいきません。一体、夫がどれぐらいの借金があったかを一度自分で調査しなければいけません。
この部分も弁護士さんに全部お願いすることも可能です。
また、相続人全員が協力して限定承認する必要があります。親族で足並みを揃える必要があるんです。これもハードルが高いです。
相続に関するルール、なかなか覚えられないですが、NHKプラスで放送を何度でも見られると言われても、この記事のように内容をまとめてくれないとどうしようもないですよね。
売れなそうな家や土地はどうすればいいの?
売れなそうな家や土地はどうすればいいんでしょうか。売れない空き家の問題に取り組んでいるのが、NPO法人空き家・空き地管理センター代表理事の上田慎一さんです。
1年以上売却できなかった空き家は、どんどん傷んで価値が落ちてしまう
5年間売却できなかった空き家、築50年、40年から50年ぐらいでしょうか。相続した人が電車で片道3時間半離れている遠方に住んでるため、片付けも進んでいません。5年間放置された家財道具が残っています。キッチンも生活感がかなり残っています。放置しておくとどんどん痛みますよね。
例えば、ガス給湯器もかなり新しいものが入っていましたが、5年間動かしていないともう壊れてしまっているようです。さらに窓がもうスムーズに開かなくなっていて、建物自体も劣化してしまっています。日本の住宅は木造なのでどうしても湿気に弱いです。長期間放置すると最悪の場合、家が崩れてしまいます。畳にはネズミの糞なども散らばっていました。空き家の期間が長くなると、こういった小動物が来て、その小動物を狙って少し大型のハクビシンやタヌキが住み着いてしまうようなケースもあります。動物の住処になる原因となってしまいます。
家を売却するならなるべく早く整理する必要がある
将来的に家を売却することを考えている場合には、なるべく早く整理する必要があります。相続した時にはゴミ屋敷のように物が溢れていたお宅でも、しっかりとハウスクリーニングなどで家財を処分し、リフォームしたところ、きちんと1年で売れました。リフォーム代を入れてもプラスの利益が出ました。マンションの場合ですね。
空き家にしている期間を短くするための計画を立てる
とにかく空き家にしている期間を短くすることが重要です。そのために重要なのが、売却までのスケジュールをしっかりと考えることです。
- まずは相続するかどうかを決めて、相続する場合には名義を変更します。
- そして半年以内に遺品の整理や家財の処分を行います。
- そして不動産屋さんに相談しましょう。8ヶ月後ぐらいまでに相談しましょう。
- そうすると9ヶ月後ぐらいに売り出しに出すことができます。
- 売り出しに出して4ヶ月ほどで売れる場合があります。
1年ぐらいで売却できるというプランを立てていきましょう。
遠方の場合や多忙な場合は空き家管理の代行をしてくれるサービスを利用する
もちろんその間も管理する必要がありますので、月1回は訪問して家を掃除したり、庭の雑草が伸びきったりしないようにしなければいけません。しかし、遠方に住んでいると困りますよね。そこで空き家の管理サービスがあります。換気や庭の管理、郵便物の回収、館内の清掃、外観や内観の確認などがあります。月に1万円からで行ってくれます。
管理不全空き家に指定されてしまうと固定資産税が6倍に跳ね上がる
費用がかかりますが、放置してしまって管理不全空き家に指定されてしまうと、固定資産税が6倍になってしまいます。相続は本当に大変です。両親が施設に入ってしまって、生きているけど実家が空き家になっているという場合があります。これもどうするか難しいですよね。
早めに家財などは整理しておくと、その後何とかしやすくなりそうです。
相続はやってみないと分からないことだらけです。裁判所で丁寧に教えてくれるので、まずは訪問するとか電話で聞いてみるのがおすすめです。
受け取れる相続財産があったのに、家族間でトラブルになってしまった事例
次は、受け取ることができる相続財産があったのに、家族間の考え方の違いでトラブルになってしまった場合をご紹介します。
お母さんが3年前に亡くなって相続人が兄妹2人になりました。100坪の土地と家屋が2棟残っていました。評価額は3000万円でした。相続にはお父さんの遺言書が残されず、兄妹2人は1/2ずつ相続する権利があります。奥さんはすでに亡くなっていました。
しかし兄妹で相談したところ、長男が家を相続するべきだと主張しました。これはちょっと変ですよね。この古い考え方に納得できずに、妹の方は弁護士に相談しました。
弁護士から「相続放棄はしてはいけない」とアドバイスされた
「今回は相続放棄はしてはいけませんよ」と言われました。相続放棄しなくても大丈夫です。それは強制されるものではありません。お兄さんの要求を受け入れないことにしました。「土地と家屋を分筆して半分をもらって売る形に持っていけないか」と弁護士は言っていました。ドロドロした匂いが出てきましたね。
こういったケースは典型的な例です。今でもまだまだこういうことはあります。今の世の中そして法律はそのようなルールにはなっていませんが、こういう主張する人は多いです。弁護士さんに事前に行くと、そんな相続放棄する必要はありませんよと言われますが、弁護士や司法書士に相談する前に「お兄さんに言われたから」「兄弟間で喧嘩したくないから」と言って相続放棄してしまう例が多いようです。一度放棄してしまうと、もうそれを取り戻す、相続する権利を取り戻すことはできません。
遺産を分ける時の法律上のルールとは 遺留分
遺産を分ける時、法律上はどうなっているんでしょうか。改めて確認しましょう。
遺言書があれば遺言書の通りに分ける
ポイントはまず、遺言書があるかどうかです。原則として、遺言書の通りに分けます。
しかし、遺言書に「長男に100%渡す」と書いてあった場合でも、みんなで話し合って分けることも可能です。
全ての財産を誰か一人にあげるという遺言書があっても、他の相続人は遺留分を主張できる
しかし、例えば遺言書に「家は長男に」と書いてあって、他にほとんど財産がない場合、他の相続人は何も相続できなくなってしまいます。これは不公平ですよね。
こういう時、他の相続人は遺留分という制度があって、全ての財産を誰か一人にあげるという遺言書があっても、他の相続人は自分の法定相続分の半分までは「私はもらう権利があります」と主張することができます。そのため0になることはありません。
ドラマなどでは「自分の全財産を愛人に渡す」なんていう遺言書が出てきたりして驚いたりしますが、正当な相続人たちは自分でちゃんと主張すれば、しっかりと自分の遺留分は主張してもらうことができるんです。
これは絶対に知っておきたいことですね。
しかし、主張しないともらえないです。
遺言書がない場合、遺産分割協議で分ける
遺言書がない場合には相続人全員で話し合って分けます。遺産分割協議といいます。もし揉めたら家庭裁判所で審判という制度で分け方を裁判所で決めてもらうことも可能です。
遺産として不動産を分ける方法
また、遺産はお金であれば分かりやすいんですが、不動産となるとどう分けたらいいのかわからない、難しいですよね。基本的には相続人で話し合うのですが、いくつかの例に分けてみましょう。
現物分割
例えば、現物分割と言って家は長男に、田畑は次男にという分け方が可能です。それぞれの名義に変更します。
換価分割 これが多い
また換価分割という方法もあります。不要な不動産を一度現金に変え、公平に長男と次男で分けることができます。
代償分割 意外と難しい
また代償分割という方法もあります。不動産自体は、例えば長男が引き継ぎますが、次男に対してはお金で取り分に見合った金額を渡します。長男が家をもらう代わりに、長男が次男にお金を渡すということも可能です。しかし、これはかなりの経済力がないと難しいです。
特に東京やその近郊では不動産価格がかなり上がってしまっていますので、5000万円とか1億円を兄弟が2人だけで相続するとなると、法定相続分は半分ずつなので、本来1億円の家は5000万円ずつに、5000万円の家は2500万円ずつに分けるべきです。しかし、長男が1人で相続しようとすると、長男が次男に2500万円を自腹で払わなければいけないということになってしまい、非常に難しいので、現実的には換価分割になる場合が多くなっています。
親の介護に対する寄与分は認められる?
また、親の介護が絡んでくるとさらに複雑になってきます。
例えば、Cさんの父親が亡くなりました。しかし、姉妹でトラブルになりました。相続人はお母さんとお姉さんと妹です。お父さんが残した遺産預貯金は2000万円でした。お母さんが1/2、姉妹は1/4ずつを相続することになります。しかし、お姉さんが遺産を受け取ることに抵抗を感じてしまいました。
なぜかというと、生前にお父さんからお姉さんの方にだけ金銭的な支援がありました。離婚して1人で子育てをしていたので頻繁に娘さんに金銭や生活費などを送っていました。その親心は当然のことです。
亡くなる2年前からなんとお父さんの介護ををやってきた
また、妹のCさんの方はお父さんの介護を行っていました。亡くなる2年前からなんとお父さんの介護をずっと一人でやってきました。お姉さんは全く手伝っていませんでした。しかし、お姉さんには法律で決まった割合の遺産を渡さなければいけませんでした。ちょっと割り切れないなと思って、しこりとして残ってしまいました。今まで通り仲良くしましょうとは思えなくなってしまいました。
亡くなった人の介護に携わった場合に、遺産相続で寄与分を考慮してもらえるケースは少ない
亡くなった人の介護に携わった場合に、遺産相続で考慮してもらえることはあるんでしょうか。
これが意外と少ないです。介護は家族で扶養義務があると民法には書かれていますので、一定程度みんなで助け合って生きるものだと書いてあります。そこで一般的な介護をしただけでは財産はもらえません。多めにもらうことはできません。
寄与分を認められる条件
しかし、もらえるケースというのはあります。これが寄与分というものです。寄与分を認められる条件としては、
- 亡くなった人にとって必要不可欠な介護だったかどうか、
- 片手間でなく、かなり負担がある介護かどうか、
- 長期間で継続性がある介護だったかどうか、
- 対価を得ていないかどうか
などの基準があります。これに寄与した分のお金が多めにもらえます。これは証明できないといけませんので、自分がどれぐらいの介護をしたかどうかはメモなどで残しておいた方がいいです。これはずっと継続的に行っていく必要があります。後から書いたとは思われないように記録していく必要があります。
介護しながら相続のことを考えるというのもなかなか気が重いですが、そういう覚悟をしておく必要があるかもしれません。こうしている間にも遺産相続の手続きをしている人、結構多いようです。なかなか簡単ではありません。
上記の内容はこれまで裁判で認められた判例での判断基準です。
要介護2以上であれば介護ヘルパーさんの1日の費用の7割程度は寄与分として認められることがある
複数いくつかの条件が当たり、また証拠がしっかりとありました。要介護2以上であれば介護ヘルパーさんの1日の費用の7割程度は寄与分として認められることがありました。条件としては厳しいので認められないことが多いです。いずれにしてもこれまでどんな介護をしてきたかを記録しておくことが重要です。
昨今、相続の相談が法律事務所へ増えている
昨今、相続の相談が法律事務所へ増えています。相続人をたどっていく業務もしています。戸籍は本籍の市町村で取得しますので、転籍したり離婚・再婚を繰り返している場合には郵送でのやり取りでは3ヶ月があっという間に過ぎてしまう場合がありますので、まず早めに弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。
相続放棄の期間の延長の申請
相続放棄の期間の延長の申請をすることが可能です。3ヶ月はなぜあるかというと、プラスの財産があるのかマイナスの財産があるのか調査する期間が必要です。しかし、なかなか調査しきれない場合があります。戸籍も取り寄せられない場合があります。
そんな時に、伸長といいますが、期限を延ばすことができます。裁判所に申請すれば簡単に認めてくれます。3ヶ月程度は認めてくれます。
複雑な場合はさらにもう1回延長してくれる場合もある
相続財産が多いとか複雑な案件かと思った場合には、さらにもう1回ぐらい延長してくれる場合があります。ケースによっては都合9ヶ月ぐらい相続放棄をするかどうかの最終判断まで時間を取ることができます。
相続トラブルを未然に防ぐための方法 家族会議
相続トラブルを未然に防ぐための方法で一番安上がりなのが、家族会議をする方法です。親が元気なうちに家族会議をしておきましょう。
70代のご両親とアラフィフの2人のお子さん、家の土地は70代の両親の共有名義で建物は同居している長男の共有名義になっていました。2年ほど前に新築したばっかりです。
司法書士に立ち会ってもらいながら家族会議
老後の計画や相続、専門の司法書士の宮田こうじさんに立ち会ってもらいながら、家族会議を行うことにしました。
まず話をしてほしいのはご両親が老後をどう過ごしたいか 親の今後の計画を家族でしっかりと共有すること
相続の相談というと、どう遺言書を書くかとか財産をどう残すかといった相談が多いのですが、まず話をしてほしいのはご両親が老後をどう過ごしたいかが重要です。ポイントのその1は親の今後の計画を家族でしっかりと共有することです。財産を実際に残せるかどうかは今後の過ごし方次第です。
両親ともに動けなくなったら施設入所を希望していた事が判明
現在は体も健康で家に住んでいますが、お父さんは足腰が動けなくなったら奥さんに迷惑をかけたくないので施設に入るという覚悟を決めています。お母さん、70代のお母さんはピンピンコロリになりたいです。トイレに行けてシャワーを浴びるまでは家にいて、それができなくなったら施設に入所するというのが理想だと言います。実は、両親は2人とも将来は在宅介護ではなく施設入所を希望していました。
計画から将来かかる費用を算出する
そうなると施設利用料は毎月20万円ぐらい考えないといけません。ご両親のうち1人でもそうなれば月額20万円ちょっとかかってきてしまいます。仮に2人で施設に入った場合には月に40万円ぐらいかかります。これは地域や施設によってそれぞれ変わってきます。
親が保有資産と収支状況を子供たちにオープンにする
毎月の収支はどれぐらいだとトントンなのか、マイナスになっていくのかを検討します。親が保有資産と収支状況を子供たちにオープンにすることです。親の持つ資産で老後が安泰なのか、資産を残せるのかを判断していきます。収入として年金がどのくらい入ってきているかを把握していますでしょうか。
お父さんが年間173万円、お母さんが59万円とのことでした。月で割れば収入が2人で20万円弱です。この半分を今の生活として毎月支出しています。将来2人とも施設に入った場合には1月当たり20万円を貯金から取り崩していく必要があります。
結構生活が大変になりそうです。言いにくいことも保有資産についても家族で共有しましょう。なんとお母さんが療養の資金として株券を持っていることが分かりました。4銘柄で額面が900万円ぐらいでした。現金は家を建てる時にだいぶ使ってしまいました。ご両親がいるうちにこういうところまで踏み込んでおこうと話をしておいた方が問題の先送りをしなくて済みます。
お子さんもお考えを話しておく
お子さんもお考えを話しておきましょう。例えば弟さんが同居しているので、亡くなった後も色々お金がかかるので、もう家に関しては弟に全部相続してほしいと親の面倒を見てくれているので、お姉さんは財産はいらないと考えていました。ありがたいことです。
弟さんは逆に「ありがたいけど納得いく金額は払いたい」と考えています。それでお姉さんと関係が悪くなってしまうことを心配しています。もし現金をちょっともらえたら嬉しいなと考えています。こういう話をオープンにしておくことがとても大事です。
相談した後で遺言書に書くのが重要
そして相談した後で遺言書に書くのが一番重要です。
親のどちらが先に亡くなっても家族が揉めないようにしておく
親のどちらが先に亡くなっても家族が揉めないように、お父さんとお母さん両方に遺言書を書くことをお勧めしました。司法書士の方にチェックしてもらいながら遺言書を書くことにしました。
施設に入るまでどれ鞍機関があるか分かりませんよね。段々体が弱っていったり、病気になったり、もちろん急に亡くなることもあります。長
い将来の先に相続があるという認識で、老後や介護資金繰りまで含めてしっかりと行う必要があります。
親のライフプランの話から切り出すとスムーズ
子供世代から資産をどれぐらい持っているかを切り出しにくいところはありますよね。プラスだったらいいけどマイナスの部分は親は隠したがりますよね。親のライフプランの話から切り出して、その後に相続があるので、最初から相続の話をする必要はありません。どういう風に介護してもらいたいのかということから始めるのがおすすめです。
遺言書のポイント
遺言書のポイントは、例えば以下のようになります。
遺言書の例
- 「私の財産全てを夫に相続させる」
- 「夫が亡くなった時は不動産は長男に、預貯金の金融資産は長男に60%、長女に40%の割合で相続させる」
- 「遺言執行者として長男を指定する」
○○年○○月○○日署名捺印
全て
自筆で書く
全て自筆で書きます。
パソコンで作ったり誰かに代筆してもらったりすると無効になります。鉛筆だと消されてしまうので、できるだけ消えないペンで自筆で書く必要があります。
誰に何を相続させたいのかを書く
そして本文には誰に何を相続させたいのかを書きます。誰に相続させるかを書く際には、フルネームだけだと同名の人がいる場合があるので、生年月日や続柄(例:夫、長男、長女など)で特定できるようにしてください。夫にとって長男が2人いるということはありえませんよね
作成した日付と署名捺印
最後に作成した日付と署名捺印が必要です。できれば実印で押して欲しいです。認印でも法律上は大丈夫ですが、本人でしか持っていない印鑑で押しておくと、手続きがトラブルになる可能性を下げることができます。
遺言書は司法書士や弁護士などにチェックしてもらう
またこの遺言書、司法書士や弁護士などにチェックしてもらうのもおすすめです。必須ではありません。
まとめ 相続税などにも注意
短い時間でしたが、密度の濃い内容でしたね。日常生活で触れる機会はまず無いですが、それだけにややこしく感じるのが遺産相続です。
さらに今回、番組では触れませんでしたが、相続税などにも注意が必要です。
不動産については相続登記が義務化されました。
さらに遺言書については他にも知っておくべき様々な内容があります。
全部を覚えておく必要はまったくないのですが、だいたいのイメージをつかんでおき、いざとなったら弁護士、司法書士、税理士、ファイナンシャルプランナーなどに相談するのがおすすめです。